2011年06月19日

たまにはレコードお勉強話〜米盤7インチ・レコードの材質編

日々、淡々とレコード紹介ばかりしていますが、レコード屋さんらしくたまにはレコードの雑学についてでも書いておきたいと思います。

アメリカの7インチ・レコード・プレスで用いられている材質には、主に「塩ビ」と「スチレン」の2種類があります。

■ 塩ビ(塩化ビニール):英「Vinyl / Polyvinyl Chloride」(読み:ヴァイナル)
Compression Moulding

motown_1052_vinyl.jpg
※例:Motownのビニール・プレッシング
マトリックスに「Nashville Matrix」刻印のある、ナッシュヴィル工場プレス


耐久性のあるレコードを目的とし、1930年代初頭から使われた比較的柔軟な素材。
プレス方法は、粘土状になった塩ビを加熱式スタンパー(Compression Moulding)に流し込み、圧縮して冷やします。
スタンパーの淵から、はみ出た“塩ビ”は削り落とされ、再び粘土状にされて再利用されます。
なので、異物や気泡等が混入した“再利用部分の塩ビ”でプレスされたレコードでは、プレス・ミスが起こる事がありました。
そしてこのプレス方法では、加熱されたスタンパーが膨張/収縮を繰り返す事が原因で、通常1,000回のプレスが限界だったと言われており、同一のスタンパーは磨耗した状態になります。
低予算でプレスの多くを行っていた、弱小インディペンデント・レーベルは、「再利用の塩ビ」を使って、「擦り切れたスタンパー」を酷使し、明らかに粗悪なレコードを市場に流通させました。
R&B系では、初期のSunや、ロサンジェルスのModern/RPM、シカゴのCobra等のレコードが、見た目は綺麗なのにノイズが多いという困り物が存在する理由のひとつです。

見分け方としては、プラスチックに近い素材で、爪でレコード自体を軽く弾いた時に「バンバン」と鳴り、“詰まっている”感じがします。
レーベルの貼り方は「完全密着タイプ」がメインです。
RCA Victorほかで、多くみられるタイプのプレス方法です。

◎メリット
・安定感のある音で鳴る
・割れにくい
・キューバーンになりにくい

◎デメリット
・上記の説明にある様に、粗悪なプレスも存在する


■ スチレン:英「Styrene / Polystyrene」(読み:スタイリン)
Injection Moulded Styrene pressings

motown_1052_styrene.jpg
※例:Motownのスチレン・プレッシング
マトリックスに「(MR)」刻印のある、ロサンジェルスのモナーク工場プレス


硬く、比較的柔軟性がないプラスチック。
プレス方法は、液体状にまで加熱されたスチレンを、注入式スタンパー(Injection Moulding)に流し込むか、噴射されます。
冷えて固まったレコードに紙製のレーベルを接着するか、直接インクで単色にレーベルを描きます。
塩ビよりも原材料費が安いうえに、加熱式のスタンパーに比べて、スタンパーの磨耗も少なかったので、合理的なプレス技術だったといえます。

見分け方は、塩ビに比べて重量が軽く、レコード自体を爪で軽く弾いた時に「カツカツ」と鳴り、パキパキしている感じです。
レーベルは、紙製レーベルや、直接印字されているレーベルがメインです。
Columbia、Mala/Bell/Amyほか、東海岸の工場で多かったプレス方法です。

◎メリット
・低予算/高品質での製造が容易だった
・音に力強さ=迫力がある

◎デメリット
・割れやすい/傷=ダメージをうけやすい
・キューバーンになりやすい
・悪い針で再生されたレコードは、擦り切れてノイズになっている事がある
・音質がヴィヴィッド過ぎて、高温部分が「シャー」と歪んだり、チリノイズが出る“ハズレ・プレス”も存在する


もうひとつ、■ アセテート/ラッカー盤(Acetate/Lacquer)というのがあります。
丸い鉄板に、メチルセルロースという写真用のフィルムと同じ素材を塗りつけて溝を掘ったレコードです。
これは試しプレスだったり、デモ/テスト盤用なので、あまり一般的ではありませんので、参考までに。


ついでに「キューバーン」についても触れておきたいのですが、DJ等でレコードをバック・キューさせて曲の頭だしをする時に、早急にレコードを逆回転させたり、何度も同じ箇所を擦ったりすると、レコードが焼ける事があります。
今までは聞こえなかったはずの「ジリジリジリジリ」、「シャ〜〜〜〜ッ」というノイズが、曲の出だしに出来ていたという苦い経験が、7インチ派のDJさんならあるかもしれません。
とくにスチレン盤は焼けやすい素材なので、DJさんにはぜひ注意していただきたいと思っております。


結局どちらにも良いとこもあれば、悪いところもあると思うので、「塩ビ」か「スチレン」の素材については、個人的にはあまり気にはしていません。どちらでも構わないので、出来るだけ良い音で鳴る“当たりプレス”を所有したいものです。

上に貼った画像の様に、プレス工場をいくつか使っていた、モータウン等の大手レコード・レーベルでは、同じ曲が、同じタイミングで、2種類(もしくはそれ以上)市場に流通している場合もあります。例えばそういう時なら、好きな素材のプレスを選べますが、どちらか一種のプレスしかないレコードでは、残念ながら選ぶ事が出来ません。
つまり、素材の事に熱心になるよりも、音楽/曲自体をもっと楽しむことを重視して、今回の話題に関しては、レコード収集の豆知識のひとつとして覚えておいていただけると幸いです。

最後にスーパー・マニア向けのお勉強サイトをご紹介しておきます。

Anorak's Corner
US Pressing Plants
Where and when were your discs made


マトリックス情報から参照できる、米国内の主なプレス工場の情報サイトです。
このサイトを楽しめるあなたは、スンバラシイ・7インチおたくに認定される事でしょう!

♪ナイトビートレコード♪
posted by DJ JAMES at 21:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする | Twitterでつぶやく
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